自筆証書遺言の書き方
正しい方法で書かかなければ、効力が生じません。
ここでは、自筆証書遺言の書き方のポイントについて解説いたします。
全てを自書しなければならない
自筆証書遺言の一番特徴的な部分と言えます。
遺言の要件は「自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。」(民法968条)と定められています。
そして、自書が要件ですので次のような作成方法は認められません。
- パソコンで作成
- 代筆
- 録音やビデオメッセージ
お気持ちをお伝えすることはできるかもしれませんが、このような形式で作成された遺言では、相続のお手続きをすることはできません。
また、病気やケガなどにより自書ができない場合は、残念ながら自筆証書遺言を作成することはできません。
この場合は、公正証書遺言を検討しましょう。
また、全文ですので財産の内容や財産を受け継ぐ人も誤記載のないように注意しましょう。
人名は、戸籍謄本や住民票など公的書類を見ながら書きましょう。
財産の内容を書く際は、不動産であれば登記事項証明書(登記簿謄本)を銀行預金であれば通帳など財産ごとに正確に内容を特定できる資料を見ながら書きましょう。
ただし、財産目録の部分についてのみ次のような自書以外の形式も認められます。
- パソコンで作成した財産目録
- 登記簿謄本や預金通帳のコピー
- 代筆してもらった財産目録
この場合は財産目録の各ページに署名と押印をします。
日付の記載は明確に
日付は、遺言を作成した日付を記入します。
そして、この日付も遺言においては重要な要素となります。
その当時、遺言者が健康状態等から遺言を書ける状態だったのかということにも関係します。
また、「前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。」(民法1023条)このような定めもあります。
これは、複数の遺言があった場合、古い遺言と新しい遺言のなかで抵触する内容があった場合は、新しい遺言が優先されることになります。
例えば、
令和2年5月1日付の遺言「長男AさんにZという車を相続させる」
令和2年6月1日付の遺言「二男BさんにZという車を相続させる」
この2つの遺言が見つかった場合、次男BさんがZという車を相続することになります。
ただし、法律に定めがあるからといって、このように複数の遺言があると争いの原因になるおそれもありますので、作成の際は注意が必要です。
このように、遺言にとって日付はとても重要な意味を持ちます。
そのため、令和2年5月吉日のような特定できない日付は無効となります。
日付の記載場所については決まりはありませんが、遺言書の冒頭や末尾に記載することが一般的です。
氏名の記載は戸籍どおりに
氏名の記載は、誰がこの遺言を作成したのかを明確にするためのものです。
遺言者が誰であるかについて疑いがなければ、ペンネーム等の通称も認められることもあります。また、氏または名のいずれかのみであっても、遺言者と他人との混同を生じない場合には有効とされる場合もあります。
しかし、後日の紛争を予防する趣旨からも戸籍どおりに書くことをお勧めします。
氏名の記載場所については決まりはありませんが、遺言書の冒頭や末尾に記載することが一般的です。
印鑑は対照可能なものを
押印に使用する印に指定はありません。
そのため、認印や拇印、指印でもよいとされています。
しかし、やはり紛争を予防するという観点からは、実印のような対照可能な印鑑を使用することをお勧めします。
押印の場所については決まりはありませんが、遺言書の署名部分の横や下に押すのが一般的です。
訂正したいときは
その場合、定められた訂正方法で訂正すれば問題ありません。
しかし、その方法は厳格に定められています。
「自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。」(民法968条)
つまり、変更方法としては
- 遺言者自身が行なう事
- 変更の場所を指示して訂正した旨を付記すること
- 付記部分に署名すること
- 変更の場所に押印すること
となります。
訂正方法を間違ってしまった場合は、その訂正の効力は生じません。そのため、訂正自体が無かったことになります。
遺言書全体が無効となるわけではありませんので、訂正されていな遺言書が残ることになります。
ただし、日付の記載など遺言に必ず必要な部分の訂正方法を間違ってしまった場合、遺言全体が無効になるおそれもありますので注意が必要です。
遺言書は封筒に?
遺言書は、必ず封筒に入れておかなければならないわけではありません。
しかし、遺言書の偽造、変造や破棄を防ぐという意味からも封筒に入れて保管することをお勧めします。
封筒には、封印をし、遺言書の作成日と氏名を記入の上、押印しましょう。
また、「遺言書は開封をせずに、家庭裁判所の検認を受けてください」などの一文を入れておくとよいです。
後日、相続人の方が遺言を見つけ勝手に開封してしまった場合、その相続人の方が、偽造や変造などを疑われかねません。
家庭裁判所の検認期日に開封してもらうようにするために記載したほうがよいものです。
以上が自筆証書遺言の作り方です。
当事務所では、遺言の作成支援はもちろん、生前対策を含めたご相談を承っております。
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